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静かな贅沢 ― 数十年かけて手に入れた、本当の豊かさ
私はこれまで、数十年をかけて一つのことを実現してきた。
それは『静かな贅沢』と呼ぶべきものだ。
派手なブランド品でも、豪華な旅行でも、高級レストランのフルコースでもない。
もっと静かで、地味で、でも確実に心と体を優しく満たしてくれるもの。それが、私が長い時間をかけて手に入れた「静かな贅沢」だ。
教養こそが、今や本当の静かな贅沢になっている時代である。
情報が溢れ、スマホ一つで何でも検索できる現代。
多くの人が「検索すれば、美味しい食事や健康的な食生活を簡単に手に入れられる」と思い込んでいる。
しかし、それは大きな間違いだ。
検索結果に並ぶのは、企業が宣伝したい情報や、効率的に作られたレシピばかり。
表面的な知識をいくら集めても、それだけで「本質」を心から掴めるわけではない。
もし私と対談する機会があったら、こんな話をするだろう。
「本当の食の教養とは、たとえばこういうことです。
食材の産地や製法、歴史的背景を深く理解すること。
伝統的な一汁三菜の知恵から、栄養バランス(お米と味噌汁で必須アミノ酸を補い合う仕組みなど)を体得すること。
添加物の名前や役割、食品表示を正しく読み解き、体に本当に合うものを選べること。
そして何より、季節の移ろいとともに変わる野菜や魚の味を、五感で優しく感じ分けられる感性を持つこと。」
こうした知識と経験は、検索だけでは決して手に入らない。
長い時間と繰り返しの実践、失敗と気づきを積み重ねて初めて、自分のものになる。
情報過多の時代だからこそ、教養は手に入れるのが極めて難しい、静かな贅沢なのである。
私は食の研究を仕事として手掛けています。
その研究のために、山ほどたくさんの飲食店を訪れ、数えきれないほどの食事を経験してきました。
だからこそ、外食の楽しみも重々知っています。あの瞬間的な高揚感や、職人の技が光る一皿の感動は、確かに素晴らしい。
けれど、同時に健康に対して残念な事実も、体感として、そして知識としても深く知っています。
外食や加工食品に多く使われる添加物は、思った以上に体に負担をかけているのです。
たとえば、ハム・ソーセージ・ベーコン・インスタント麺などに含まれる**無機リン酸塩(食品添加物のリン)**は、天然のリンに比べて吸収率が非常に高く、腎臓への負担が大きいことが多くの研究で指摘されています。過剰摂取は高リン血症を引き起こし、心血管疾患のリスクを高める可能性があります。
また、着色料や保存料、MSGなどの添加物は、敏感な人では摂取後すぐに肌に反応が出やすく、じんましんや湿疹などの症状が報告されています。
さらに、過剰な砂糖・糖分は体だけでなく精神にも影響します。脂肪肝や2型糖尿病のリスクを高め、老化を加速させます。血糖値の乱高下は気分の落ち込みを招き、うつ病リスクの上昇とも関連が示されています。
脂肪分の過多(特に加工食品に含まれる飽和脂肪酸やトランス脂肪酸)も深刻で、LDL(悪玉)コレステロールを増加させ、心筋梗塞などのリスクを高めます。
こうした研究結果と日々の外食体験から、私は「外食以上の美味しさで、健康な料理を実現すればいい」と長年、心を込めて掘り下げてきました。
それは、大切な家族へ特別に与えたかったものだったからです。
家族として信頼関係が築けているかどうかは、実は家庭料理によく表れます。
私はお味噌汁の塩加減一つ、加える材料一つにも、家族一人ひとりのその日の体調や、欠乏しがちな栄養を考えて調整します。
家庭のお台所は、まさに“薬箱”のような存在だと、私は現実的に実感しています。
ただただ食べておけばいいなんて、勿体なくてできません。
食を心から美味しく楽しみ、家族で満遍なく栄養を摂ることができている。
食事は喜びであり楽しみだと、家族がいつもワクワクしながら食卓に着く――そんな家庭であることが、私の大きな幸せです。
愛情あるものを形として家族に与えられている。
食の専門家として仕事をしているからこそ、どんな家庭よりも最高のものを与えてあげられると信じ、日々高め続けています。
外食産業で特に感じるのは、食べさせたい人への思いやりや、料理への愛情がない人が作ると、極端に無機質で「美味しい」とは思えない食事になってしまうということです。
フードコートなどを見渡すと、多くの人たちが無表情で食べ、雑に残している姿をよく見かけます。
明らかに満足ではない表情や、不健康そうな顔色をしている人も少なくありません。
最近、SNSなどで「静かな贅沢」という言葉を目にしたとき、思わず胸に違和感が広がりました。
安価で大量に消費することと、本当の贅沢とは全く違う。
高価なものをたくさんお金で買い、他人に作ってもらって食べることも、本当の贅沢とは言えません。
一番信頼がおける身内の人が、家族一人ひとりの体調や喜ぶことを考えながら、心を込めて美味しい健康の料理を作ってくれること――それこそが、本当の静かな贅沢なのです。
それはお金を払っても決して得られない、かけがえのない価値があります。
外食では、どれだけ高級なお店でも、それほどの安心と安全、そして心から美味しいと感じるものを手に入れることはできません。
世界中の家庭料理をインターネット上でも確認できますが、日本の家庭料理ほど安心で安全なものはないのかもしれないと思えることも多々あります。新鮮な食材を丁寧に扱い、季節に寄り添った調理が、日常の食卓に静かな安心感を与えてくれるからです。
ただ、日本企業が作る加工品については、食品の偽装問題や異物混入、原材料の不確かさが年々増加傾向にあり、安全でないものが増えているのも現実です。
それと比例して、食のリテラシーが低い人が増え、無知識と「楽さ」を選ぶ人が増加しました。結果、不健康な人が増えている。この事実は紛れもない事実です。厚生労働省「国民健康・栄養調査」によると、男性の肥満者(BMI≧25)の割合は約31.5%で推移しており、20~30歳代女性のやせ傾向(約20%前後)や高齢者の低栄養傾向も目立っています。
不思議なのは、世界的健康ブームの中で日本食が注目されているのに、日本人に合った食材と調理法を、外国への販売促進のために間違った健康情報として流している点です。日本人と外国人の塩分の許容範囲、ヨード摂取量、脂肪分の違いを伝えず「健康だから」と宣伝するケースが見られます。これは本当に外国人の健康につながるのか疑問です。また、外国市場を意識した輸出拡大が、国内の食品価格高騰を招いている現実にも着目しています。
そんな中で、私が実際に作った一皿がこちらです。
(ここに提供された画像を挿入)
スパイシー海鮮ガパオライス
これは私が完全手作りで、無添加で仕上げた料理です。新鮮な海鮮を丁寧に下処理し、添加物を一切使わず、自分の研究で磨き上げた調味バランスで仕上げました。外食のガパオライスを超える美味しさと、体に優しい安心感を両立させた一品です。家族の笑顔のために作り続けてきた味が、ここに凝縮されています。
今でも、外食のクオリティ確認のために色々なお店を訪ねますが、価格上昇に対して味や食材のクオリティが低下していることを心から残念に感じます。
外資系大手チェーンが全国を席巻し、どこでも同じ味、同じ見た目。資本主義の論理が優先される中で、本来の美味しさは薄れています。
その経験があるからこそ、私は以前に「美味しい」と感じた外食料理を、さらに健康的に、そしてもっと美味しく再現できるようになりました。
家族のために磨き上げてきた技術と知識が、今では私の料理に確かな価値を与えてくれています。
食の安定は、多くの人にとって全く享受できない贅沢であり、特権なのだ。
私は数十年にわたり、食材の本質を追い、添加物を極力避け、季節のものを丁寧に選び、体が本当に欲するものを味わう生活を積み重ねてきた。
それは決して派手なことではない。むしろ、とても地味で静かな営みだ。
でも、その静けさの中にこそ、圧倒的な豊かさがある。
外食や惣菜に頼らなくても、自分の手で作れる一皿が、心の底から満足できる。
季節の野菜一つ、魚一匹の味を、ちゃんと知っている。
この「静かな贅沢」を、これからも大切な家族と共に大切に育み続けたい。
同じように、日々の食に想いを寄せる皆さんが、
情報に流されず、自分と大切な人の体と心を思いやる食卓を持てますように。
現代を生きる私たちにとって、本当の豊かさとは、そんな静かで温かな食の営みにあると、私は心から信じています。

料理研究家 指宿さゆり
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