2023年06月29日 (更新 2024年11月21日)

【大豆ミート料理研究家に直撃!後編】「大豆ミート料理がやめられない3つの理由」とは?

今では日常的に目にするようになった大豆ミート料理。ヘルシーだったり使いやすかったり環境負荷が低かったりと、いいこといっぱいなのは知ってるけど、なんとなく今まで試す機会がなかった…という人はまだ多いのでは?

Snapdishでは、そんな大豆ミートの魅力をもっと多くの方に知っていただきたいと考え、2022年3月29日(肉の日)に「肉の日に大豆ミートプロジェクト」を発足しました。その活動のひとつとして今回は、長年にわたって大豆ミート料理を研究している料理家・坂東万有子さんにインタビュー。前後編の2回に渡ってお届けします!後編は、坂東さんが実感している、大豆ミートの奥深い魅力についてお聞きしました。

■大豆ミートの魅力①…ヘルシーと満足感の両立


編集部)大豆ミート料理の専門家である坂東さんから見て、その魅力とは何でしょう?

坂東さん 大豆ミートは3つの点で、すごく現代的な食品だと思っているんです。

その1つ目は、栄養面に優れていて健康的な食品でありながら、食卓の中でメインのおかずとなり得る満足感もあるということ。

編集部)確かに、「お肉よりヘルシーだから」という理由で大豆ミートを選ぶ人は多いですよね。
▲大豆ミートは、栄養をしっかり摂りつつ、現代人が減らしたいものをカットできる優秀食材。
※『大豆ミートのヘルシーレシピ』(2018)河出書房新社より転載
坂東さん 大豆ミートはお肉と比較するとカロリーは3分の1~4分の1。本来、大豆は油分を多く含む食品ですが、大豆ミートは油を絞った後の大豆たんぱくが主な原料なので、大豆ならではの栄養素を残しつつも低脂質。植物性ですのでコレステロールはもともと含まれていません。

そして、アミノ酸スコアも動物性肉に引けをとらないバランスで含まれている良質な高たんぱく質食材なのです。

編集部)現代人の食生活はどうしてもカロリーや脂肪が過多になりがちなので、ありがたいですよね。

坂東さん それでいて、メインのおかずになるボリューム感があるのも大きな魅力です。大豆ミート自体には味がついていないので、いい意味で主張しない。つまりどんな料理にでも使えるということです。

■大豆ミートの魅力②…とにかく使い勝手がいい!

坂東さん 2つ目は、使い勝手の良さです。私は10代の頃から25年以上、大豆ミートを使って料理をしていますが、それは単純にすごく料理がしやすい食材であるということも、理由のひとつです。

まず、大豆ミートは、ミンチ、ブロック、フィレやスライスのようにすでに使える形になっているので、切らなくていい。生肉を切ると、それに付随して包丁やまな板やボウルなどの調理器具をしっかり洗わないといけないのが、急いでいる時は面倒ですよね。

編集部)そうなんです!お肉を触った手で他の物を触らないようにしないといけないし、何かと気を遣いますよね。

坂東さん それに、大豆ミートはすでにすでに製造時に加熱されている食品ですから火の通りが早いですし、「中心が生焼けじゃないか」と気にしながら調理する煩わしさから解放されます。調理時間も短くて済みますし、洗い物も少なくなりますから、疲れていて料理をしたくない時や簡単に済ませたい時にも、本当に助かりますよね。
▲⽕の通りが早いので、炒め物料理がさらにスピーディに作れる。
※坂東さんのInstagram(@mayuko_bando)より

坂東さん さらに常温保存できるたんぱく質という点も大きいですね。忙しくて買い物に行けなくて、メインに使えそうな食材が冷蔵庫にない時に、大豆ミートに何度助けられたかわかりません。
編集部)私の場合、お肉は大好きなのに、年齢とともに食べた後に胃にもたれて敬遠するようになっていました。でも大豆ミートだとボリュームのあるおかずでもたれず、食べた後も体が軽いので、いいなと思っています。

▲大豆ミートの唐揚げは、朝食に食べてももたれない軽さ。
※坂東さんのInstagram(@mayuko_bando)より
坂東さん 私の料理教室には幅広い年代の方がいらっしゃるのですが、シニアの方の中には、たんぱく質を摂らないといけないけれど、お肉もお魚も負担に感じる、という方もいらっしゃいます。

でも大豆ミートを召し上がると「これは軽い!でも満足感がある」とおっしゃいます。

編集部)本当にその通りで、私は食べ過ぎた後の「リセットごはん」として、大豆ミート料理を食べることもよくあります。

坂東さん 「リセットごはん」、いいですね! 確かにそういう時にもぴったりです。
編集部)お話を伺っていると大豆ミートは良いことづくしのように思えますが、デメリットもあるんでしょうか?

坂東さん 食材の特徴として、お肉と違って食材自体から出汁が出ないことですね。ですから、動物性肉を使う感覚でひき肉料理や煮物料理や作ったらなんだか物足りなかった、ということになります。

【お肉は旨みを出す、大豆ミートは旨みを吸う】と覚えておいて、旨みを吸わせるような調理法にしましょう。また、含まれる油分も少ないので、【炒め物の時には炒め油を少し多めに使う】こともポイントです。

■大豆ミートの魅力③…お肉以外の選択肢が広がる

坂東さん 3つ目は、動物性肉に頼りすぎて環境に負荷を与えている今の状況を改善できること。

もう言い尽くされていることですが、牛肉1kgを作るためにどれだけの水や緑、肥料や資源が消費されるか…。それに動物愛護の観点からも、人間のエゴで管理されすぎた食肉の生産システムを見直す必要があるのではと思っています。私もお肉はいただきますが、不必要に大量のお肉を生産してまで食べることはないと思うのです。

編集部)確かに、現代の食生活はお肉に偏りすぎているかもしれません…。

坂東さん ただし我慢は続かないので、食の楽しみはなくしてほしくないのです。そこで役に立つのが大豆ミートではないかと思っています。

編集部)最近は、今までハム・ソーセージを作って来た食肉加工品メーカーさんも大豆ミート商品を作り始めていて、どんどん選択肢が広がっていますよね!

坂東さん そうなのです。ここまで豊かになった食生活で、我慢して質素にすることはなかなか難しいと思います。たとえば牛ステーキを食べたい時はしっかり食べれば良いけれど、唐揚げや餃子やハンバーグといった「肉料理」気分の時に、時には「畑の肉」である大豆ミートでその気持ちを満足させられるようになればよいのではないでしょうか。

■大豆ミートは、「ニセモノのお肉」ではない

編集部)確かに、本物のお肉と違いがわからないレベルの大豆ミ―トも増えています。

坂東さん 多くの方が「本物のお肉」という表現をされるのですが、私は大豆ミートを「お肉もどき」「偽物」という考え方はしていません。今は「代替肉」という言葉で認知されているので私も便宜上使うこともありますが、本当は代替とも思っていません。今夜は肉か、魚か、大豆ミートか、といったように選択肢のひとつだと捉えています。

これは海外旅行へ行った際に実感したことです。イギリスで立ち寄ったサンドイッチの店では、具をmeatかfishかvegetable(大豆ミート入り)かを選べましたし、アジア圏の鍋料理の店では肉の鍋、薬膳鍋、大豆ミートを使ったプラントベースの素食鍋などを普通に選ぶことができました。お肉を食べたい時(人)も、大豆ミートを食べたい時(人)も、それぞれの選択を尊重して暮らしていると感じました。
▲ロンドン市内の駅のサンドイッチ店。ベジタリアン、フィッシュ、チキン&ダック、ビーフと選択肢が豊富。写真提供:坂東さん

▲台湾の大豆ミートが選べる鍋メニュー。写真提供:坂東さん

編集部)多様性って、そういうことかもしれないですね。

坂東さん 今日のご飯のおかずを、お肉から大豆ミートに変えたところですぐ環境に大きな影響はないかもしれません。でも、そこには「新しい発見」があると思うのです。

何を選んで食べるかは個人で決めることではあるけれど、その作り手や食べるものを尊重することにつながりますし、それは自分をも尊重することにつながるのだと思います。

いろいろな国を旅して思うのですが、日本は恵まれていますし、自由な国であるにも関わらず、「(食事作りも含めて)~~するべき、~~が当たり前」といった価値観の押しつけや固定観念がまだまだ強く、視野が狭まってしまいがちなところがあるかもしれません。

視野を広げてそこから一歩踏み出すことで、もっと自由にハッピーに生きることができるようになります。そうすることで、思ってもみなかった自分に出会える可能性もあるのでは、と考えています。

だから、私は「食を広げる」=「暮らしが広がる」だと思っています。いろいろな食を受け入れることで、世界は間違いなく広がっていきますし、多くの方にそうなってほしいなと思います。
▲台湾の大豆ミート料理。写真提供:坂東さん

編集部)なんだか、大豆ミートに対する見方が少し変わった気がします。ありがとうございました!
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